今こそ世界のワインを見直す時期


ブルゴーニュやボルドーから始まった私のワイン人生。その後イタリア、スペイン、アメリカ、チリなどをいろいろと試しましたが、結果最も中心的存在になったのはブルゴーニュのワインでした。


官能的で熟成した姿の魅力的なこと、長い期間私はブルゴーニュから離れられなかったのです。


ところがどうでしょう。今私はブルゴーニュの比率が減りヨーロッパ全土、南アフリカ、などのワインを中心に購入しています。どのような変遷でこのような状況に至ったのか、そのことをこれからお話ししていきたいと思います。


まずブルゴーニュの比率が減ったことから始めましょう。ブルゴーニュのワインは有名生産地であるが故に他の地域よりも価格が高く、ドメーヌごとの生産量が少ないために非常に競争率が高いのです。近年の中国シンガポールなどでボルドーからブルゴーニュに人気が移る中更に価格が高騰してきています。しかし価格が高いからと言うのも理由の一つではありますが、魅力がそれを勝っていれば買わないわけではないのです。

現在世界中で自然派のワインが台頭してきている中、ブルゴーニュは黙っていても売れるという部分があり、生産者がそれにかまけて品質向上に力を入れてこなかった部分があります。そんな中若手の台頭でブルゴーニュにも自然派のワインが出始め、古参ながら前向きな生産者たちがそれに続いていますが、ある意味時すでに遅しの感はぬぐえず、農薬が土地から完全に消えるには15年ほど必要なために現在ブルゴーニュは他の地域よりかなり遅れた状況です。では若手の自然派はどうかと言えば今までのブルゴーニュの魅力度の高さが欠如している部分があり、そこが今ブルゴーニュの抱える大きな問題ともいえます。現在の若手たちのワインはブルゴーニュでなくても良いという感じしか持てないワインも多く、他の地域と比べても見劣りするような感覚すらあります。どうしてもブルゴーニュは価格が高いためにそういった意味でも見劣りするワインがあります。

しかし当然ながら秀逸な生産者のワインは他の地域にはない魅力度の高さがあるため、今ブルゴーニュの生産者を改めて見直し厳選する必要があります。しかしながらピノ・ノワールにおいては今ブルゴーニュをしのぐようなワインは残念ながらそれほどないのも現実です。


さてブルゴーニュのように先代から受け継いできた個性が今若手に世代が移るに従い、醸造学校などで学んだ知識や世界中での研修によって培った新しい知識によってその個性が消えつつあります。

つまりブルゴーニュの大きな個性は独特の伝統的な部分が作り上げてきた部分もあり、それが消えつつあるのです。私たちのような50代以上の世代はそういった個性に魅力を感じていた人が多く残念ならないと思っている人たちも多いでしょう。


今では知識が行き渡り、ある意味その国地域独特の気候とテロワールによる違いが明確に見えるようになり始めています。


こういった意味で今ブルゴーニュは本来のあり方を問われているともいえます。


フランスではアルザス、ロワール、ジュラ、ローヌ、サヴォワ、南仏、シャンパーニュなどでも若手が台頭し今まではみられなかった素晴らしいワインができはじめています。ですからその地域の個性やあり方を統一してきたような世界ではなく、それぞれのスタイルで優れたワインが数多く出てきています。まだまだ少数ではありますが、今台風の目のような存在感を放っているのです。


フランスと同じような存在感を放っているイタリア、今イタリアのワインはラシーヌを初めとするごく少数のインポーターによって本来の姿が見えるようになってきています。イタリア独特の個性はその国民性と長い間の伝統によって優れた個性を放っています。未だに国際的に知名度の低い作り手も数多くいて非常の面白い国なのです。


そしてスペインも最も遅れていた国ですが、最近では料理の影響もあるのでしょうが、数多くの生産者を輩出し始めました。まだまだ価格も安く狙い所でもあります。


ドイツも一時期低迷を極めましたが、ごく一部の生産者たちがドイツ復興を図り今かなりの成功を収めています。ぼけっとしたちょっと甘めで妙に高価なワインというイメージが今かかなり変化を見せてきています。


オーストリアもただすっきりとしたワインというイメージしか持っていませんでしたが、コンディションの良いワインが輸入され初め、その真の姿が見えはじめています。


ギリシャではごく一部ですが、国際的にみても驚くほどレベルの高いワインが作られており、国としてのポテンシャルの高さ、可能性を感じさせます。この個性と魅力度の高さはフランスの一流生産者にも負けていません。


最近は東欧でも力の入ったワインが出始めています。


アメリカは一時のボルドー信仰が落ち着きアメリカならではの効率的で最先端の技術を使ったようなアメリカならではのワインができはじめています。アメリカのワインはアメリカで飲める状態もよろしくないのですが、ほとんどのワインがリーファーを使わずに輸入されているために本来の素晴らしさを感じることのできるワインが少ないのが現実。濃くてまったりとしているちょっと過熟系のワインが多く、ヨーロッパ嗜好の人たちにはちょっときついワインです。でも素晴らしいコンディションのワインを飲めばちょっと見直してみようかなと言う気になります。


オレゴンではブルゴーニュと同じようにピノとシャルドネが中心に作られていますが、正直ブルゴーニュの魅力を上回るようなワインはほとんどありません。


ワシントンでも数多くのワインが作られていますが、どちらかと言えばカリフォルニアより。


アメリカワインに関しては、あくまでもアメリカワイン好きに愛されるワインという位置づけで良いでしょう。


さて今最も注目したいのが南アフリカです。南アフリカと言えば2年前までだと私も安くて新世界的なイメージという感覚しか持っていませんでしたが、実はここ数年で驚くほど変わってきているのです。それはやはり若手の台頭。そして南アフリカはもともと法律で農薬や化学肥料の使用が禁じられているために元々の条件が基本自然派なのです。接ぎ木をしていない樹が多くかなり条件的には恵まれています。内陸はかなり暑くなるのですが、南極よりは温暖で夏は25度、冬でも10度までしか下がらず素晴らしい気候。ここで作られる今南アフリカで注目の若手が作るワインはちょっとフランス人でも吃驚するようなワインが沢山あります。もともとステレンボッシュ大学はボルドー大学よりも先進的だといわれており、そういった意味でも優秀な醸造家が沢山育っているのです。


私はアメリカやオーストラリアのように効率化を重視したような作りのワインより比べものにならないくらい南アフリカの若手のワインの方が良いと思っています。


さて私にとって未知な存在なのはニュージーランド。楠田さんの弟さんも今有名になっていますが、酸がレモンやライム系で非常に日本人に合ったワインだと思いますが、残念ながらちゃんとしたコンディションで運ばれているワインが非常に少なく、現在購入の対象となるワインが少ないために購入対象から外しています。


チリに関しては大手が多く、資本力がないとなかなか難しいのが現実のようですが、フィロキセラに犯されなかった樹が多く、非常に樹齢の高い樹が多く機構的にも恵まれているために今後素晴らしい生産者が出てくる可能性を秘めています。


さてここまでお読みになればおわかりのように世代交代することにより、知識を多く培った若手の台頭が今世界中のワインを変え始めているのです。伝統に培われた個性が失われつつある残念な面はありますが、個性よりも質感を重視したワインが増えることで今まで注目されていなかった口地域からも数多くの優秀なワインが生まれ始めています。過去の経験則が生かせないような新しい世代のワインは嗜好という意味では外れてしまうようなワインも多いのですが、ワイン好きである以上もう一度改めて地域に縛られずに飲んでみることをお勧めいたします。


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PUR SANG

美味しいワインがなかなか見つからない、ワインのことが今ひとつよく分からない、美味しいワインを探したり美味しく楽しむためのテクニックを学んでみて下さい。

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