ワインが美味しくない理由
世界中で楽しまれているワイン、実は生産者の蔵にあるワインとは違うのです。
ワインは生産者の蔵から出荷されると、トラックによって目的地に運ばれます。遠方だと空輸や船による輸送で目的地まで運ばれ倉庫で保管され、そこからまた酒屋さんや飲食店に運ばれます。そしてお客様に飲まれたり、酒屋さんで皆さんがワインを購入するのです。
その過程で実はワインは大きく変質しているのです。蔵でせっかくちゃんと保存されているワインでも皆さんが購入するまでの過程での問題によって変質するのです。
そしてこのことは世界の常識であり非常識であるのです。
なぜこのようなことが行われてきたのかには理由があります。
まず今から30年〜40年以上前は、ワインを完全に管理して輸送する手段を確保することが出来ませんでした。
その当時のワインは今のように醸造技術も確立されておらず、生産者ごとの伝統的な製法でワインが作られていました。有名生産者でもワインを売り切ることが出来ずに、売れ残ったワインを蔵で熟成させていたのです。このような歴史的背景もあり、ワインは長熟でリリース直後から飲めるようなワインが非常に少なかったのです。
昔はワインは船で世界一周すると美味しくなるとまで言われていたほどで、残念ながら今でもそう思っている人もいるくらいです。
ですから輸送過程で多少の問題があっても変質することで飲めるようになるという現実もあり、それがワインの世界の通例となっていたという現実があります。
さて1980年代後半頃から徐々にワインの販売も好調になり各国でワインが飲まれるようになってからワインの消費量は上がっていきます。醸造学の進歩、栽培法の確立もあり、先代からの教えだけでなく次世代の若者たちは醸造学校で最新の知識を習得し始めます。
販売が好調なこと、1960年代から始まった農業の効率化で使われるようになった化学肥料や農薬の悪影響が指摘され初め、この頃から自然派への移行、早熟系のワインが評価されるようになり、ワインの世界は大きく変わり始めます。高品質のワインを作れば高く売れる傾向もあり、ワインは質感を追求するようになります。
酸化防止剤の添加量も減少しはじめ、早熟になったことでワインは以前よりも熱劣化により大きく変質するようになります。温暖化の影響も輪をかけ変質しすぎたワインが目につくようになったのです。
今から30年ほど前にエノテカ・ワイン・セレクション(現ヴィナリウス)の北岡さんが、世界で初めて温度変化の過程を記録できるチップを開発します。これによって輸送過程での問題が発覚し徐々に完全に近い形でワインを輸入できるようになりました。倉庫会社も現在ではワイン専用の倉庫をもつところも増え進化を続けています。
このような過程で日本でも完全に近いワインを輸入できるようになり、現在ではラシーヌ、ラフィネ、フィネス、ヴィナリウス、ナパ・ワイン・トラスト、エヴィーノ、をはじめとした優秀なインポーターが育ってきています。
でも実はこのようなことが行われているのは上記のような日本の一部のインポーターだけで、実は生産国などでは生産者の進化とは真逆の変化無い輸送方法がとられています。つまり生産者とワインを扱う側との意識の格差が非常に大きくなっているのです。
当然日本でも上記のインポーター以外は、依然としてワインの状態に関しては無頓着です。インポーターのホームページにはコンディションに対して気を使っているようなことが書いてありますが、飲んでみると唖然とするほど酷いワインが多いのが事実です。
ですからフランスに行ったから美味しいワインが飲めると思ったら大間違い。もし美味しいワインが飲みたいのならば生産者の蔵までいかないと飲むことは出来ません。先日フランスに行った際も生産者以外のお店でまともなワインが飲めたお店は2軒しかありませんでした。
これが現状のワイン業界なのです。
ですからワインが美味しくない理由の大きな部分はワインのコンディションなのです。
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