ワインの楽しみ方の違い
ワインをどのようにとらえているかは個人によって大きく違います。
私のように嗜好品としてとらえている場合は、食事とワインというよりもどちらかと言えばワイン単体での魅力を追求する傾向があります。
あくまでもワインを食事のお供と考えている人は、選ぶワインも全然違ってきます。昔はホテルなどに行くと例外なくデキャンタージュされることが多かったのですが、これにはいくつかの理由があります。まず食事に合うようにワインを飲みやすくする効果。デキャンタージュすると全体的なまとまりが出てきてワインに滑らかさが出てきます。これはあくまでも今飲めるワインが基準ですが、デキャンタージュする意味合いはここにあると思います。しかし我々のようにワインを嗜好品ととらえていると、そういった飲みやすさはつまらないと感じてしまいます。細かい要素やワインの持つ特徴が単調になってしまうきらいがあるのです。
また今飲めないワインを無理矢理開かせるためにデキャンタージュする場合もあります。ですが、若すぎるワインをデキャンタージュしても絶対に瓶熟されたワインにかなうことはありません。コンディションが悪いワインでもデキャンタージュすると何となく気にならなくなることもあります。
要するに食事とワインという環境ではワインはあくまでも脇役という考え方でしょう。
しかし実はコンディションの良いワインをじっくりと落ち着かせて楽しむと、デキャンタージュなどしなくても実に見事な姿になるのです。こういった状態で飲める環境は少ないのですが、これだけは憶えておいて下さい。
料理はフレンチを見ただけでも昔とはあまりにも変わってきています。健康志向になり減塩、バターや生クリームをあれだけ使いまくっていたフレンチも今では完全に健康志向になっています。昔は食べきれないほどの量だったのに、今ではデザートを食べてようやく満足できるような以前の1/3位の量。アラカルトで食べることも普通になりつつあり、料理も素材重視でこてこてとした味付けをするところは減っています。このような料理だと昔のような主張の強すぎるワインはあまり相性が良いとはいえません。けっして今の自然派ワインが良いとは言いませんが、自然派ワインが台頭してきた一つの理由として料理の変化があげられます。
ワインは飲む頻度によってもそれぞれの人によって求める部分が違ってきます。たまにしか飲まない人はワインに対するイメージが固まっていることが多く、そのイメージをワインに求めがちです。逆に全く気にしない人も多い。つまりまだワインの美味しさに気がついていないのである意味幸せともいえますが、居酒屋のワインでも大丈夫。
飲む頻度が多くなるにつれ、求めるものも幅広く明確になってきます。一般的に評論家などの評価を参考にポイント数の高いワインばかりを飲んでいる人は、インパクト系のワインが好きな場合が多い。ぐっとくる様な感動に近い衝撃がなければ美味しいと思えないような部分もあるでしょう。
今度はあまりにもワインを飲み過ぎている人。人間は不思議なことに香りと味わいの記憶はかなり残っています。私は印象が強すぎるワインはもう興味がなくなっていて、今まで体感してことのないような魅力を探しています。
人によっては気になる要素があるだけで、自分にとって悪い要因があるワインを飲まない傾向もあります。特に自然派系に傾倒している人たちにはそのような特徴があります。酸化防止剤が入っているだけでだめだったり、かなり神経質な人もいます。
アメリカワイン好きの人はアメリカワイン的なワインしか好まない傾向もあります。フランス好きの人はフランスの個性と主張が明確なワインを好む傾向があり、イタリアワイン好きはまた違ったもっとお気軽な感じでありながらフランスワインとは違った奥深さを求めます。
私の場合今では何でも美味しければオッケー。どこの国のワインであろうと魅力があれば受けいられるようになっています。
私の仕事上、極端になることは出来るだけ避けています。いろいろなワインを飲み今自分がどう感じるかと言うことをいつも試しています。ワインをお薦めする立場としてお客様の好みをどれだけ短時間で把握するかも大事で、いまその人がどんな場所にたっているのかを想像します。自分が経てきた過程と経験則を総動員しどんなワインが良いかを考えます。今では飲食店をやっていないので直接お薦めすることはありませんが、それでも30年以上の経験則が皆様のお役に立てればと思います。
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