ラシーヌ - 輸入元の特徴を把握する
ル・テロワール時代からラシーヌに至るまで長い間見てきましたが、ラシーヌの基本姿勢はワインの質感の良さです。才能のある作り手を発掘し、まだワインを作り始める前から目をつけ育てていく姿勢。自分たちで才能のある若手を探し出す姿勢。どのインポーターよりも現地に赴き実際に自分たちの目で見、舌で味わい、納得したものだけを買い付ける姿勢、それであるが故に今海外では最も注目されるインポーターなのです。
そして長い間日本のワイン業界では最も嫌われる存在でもあったのです。そんなラシーヌも最近は個人客、一部の飲食店やワインショップから絶大な支持を受ける存在となってきています。その逆にニッチだとかワインビジネスが分かっていないなどと揶揄されることも。
未だに王道派を重視するワイン業界としては目の上のたんこぶ的な存在でもあります。
新しいことを始める創始者は常にこの様な批判を浴びるものです。
さてラシーヌの選ぶワインの特長はなんと言っても質感の良さです。現地に赴き飲んでいるが故の質感重視の姿勢なのでしょう。逆に言えばあまり時間の経過を重視していない部分も見受けられます。
コンディション良く輸入することで彼らのワインは光っているのです。つまりラシーヌの選別するワインはコンディションが悪いととてもじゃないがその作り手の本質が分からないようなワインが多いのです。ですからこそ、繰り返し言っているようにコンディションを維持する努力をしなければ本来のワインの美味しさにはなかなかたどり着けない品揃えとも言えます。批判の多くはこの部分にも理由があります。塚原氏の緻密な戦略、合田女史の疲れを知らない行動力と選別の確かさ、この二人のコンビが今のラシーヌを作り上げているのです。
まさにラシーヌがいなければ私もワインホリックを立ち上げることはなかったでしょう。
私は王道派を否定しませんし、逆にワインショップとして客観的にみて選別する立場ですが、はやりラシーヌのコンディション重視の姿勢に大きな影響を受けました。王道派であろうともコンディションが良くなければその本質の良さが分からないのです。長年変質していることが当たり前で、変質することで良くなったと勘違いできるようなワインが名を馳せてきた歴史、この歴史を大きく方向転換するきっかけとなったのがラシーヌの存在でもあるのです。
低迷に苦しんでいたドイツワイン、一時はソムリエ試験から外されるような憂き目に遭い、日本でもほとんどが状態の悪いワインで一つも良いところを見いだせなかったのに、そこに素晴らしくコンディションの良い新しい姿のドイツワインを持ち込んできたのもラシーヌです。ある意味これがドイツワインが再び日本で注目されるきっかけでもありました。
状態が酷すぎてのりだけで楽しまれてきたイタリアワイン、この世界を大きく変えてくれたのもラシーヌ、だからこそ反発も大きいのです。
現在ラシーヌは自然派の傾倒しておりかなりリスキーな挑戦をしているようにも見受けられますが、選別の確かさと実際に自分の目で見て舌で味わったコンディションの良いワインで、自然派の未来を見せてくれています。自然派の世界はワイン業界にとっても一つの挑戦でありまだとても完成にはほど遠いと思われますが、そういった世界の向くべき方向を見せてくれるのもまたラシーヌだと思います。私は自然派のワインを一歩引いてみていますが、それでもその先を見てみたい気持ちはあります。
ラシーヌの品揃えで最も注目すべきはリーズナブル系のワインの美味しさ。まさに完成した姿を見せるような多くの美味しいワインがあります。他のインポーターでここまでリーズナブル系のワインで安定して完成度の高いワインを揃えているところはありません。この品揃えの確かさがラシーヌの凄さとも言えます。ワインリストを見回すと高額ワインは実はかなり少なく、所謂世間で知名度の高いと言われるワインが少ないことがあげられます。そういえばワインホリックでも昔なんでこんな知らないワインが多いんだ。分からないワインをふっかけて売っているんだろうみたいな批判を受けたことがあります。そういった目が変わってきたのもラシーヌのおかげでしょうね。世間の目など気にせずに興味のおもむくままに追求する姿勢こそがこういった世界を作り上げてきたのでしょう。
さて皆さん、長年寝かせてから楽しむワインこそ状態の良いワインでないと意味がないのです。10年寝かせて美味しくなかった、コンディションが酷いと嘆いてももう誰も相手にしてくれない。ワインを買うのも自己責任なのです。そういった意味でもラシーヌのようなインポーターを支持することこそワイン業界の未来が明るくなると思いませんか?
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