作り手の環境を知る


ワインは作り手の技量だけではなくブドウ栽培、蔵の環境が大きく関わってきます。

ブルゴーニュなどは地下に石灰岩をくりぬいたような蔵を所有するところが多く、どれだけ深いかやにじみ出てくる地下水の温度によってその蔵の温度が決まります。自然に一定の温度と湿度が保たれている環境です。ですから蔵によって温度にはかなり差があり、蔵によっては10度を下回るところもありますし、若干高めのところもあるのです。年間によっても温度差は生じ、特に温暖化の影響で夏場などは温度が通常より上昇する場合があり、最近ではエアコンを完備している蔵も増えています。年間の温度差は大きいのですが、一日の温度変化はほとんどありません。ラングドックなどの南に行くと陸上の倉庫が多くそこではエアコンで温度管理をしているところも多いのが現状です。

温暖化の影響がなかった昔は湿度が低いために比較的室内の温度は一定でしたが、最近では石造りの家も多いために逆に温度が上昇しがちです。

古い蔵の場合は蔵付きの酵母やカビなどもワインに大きな影響を与えます。ですから同じ作り手が蔵を移転すると全く違うワインができてしまうということもあります。一番わかりやすいのはダヴィット・クロワです。カミーユ・ジルーとクロワのドメーヌものがあれだけ違うのはやはり蔵の影響が大きいと考えます。、またルロワにおいてもオスピス・ド・ボーヌで落札された樽をルロワの蔵で寝かせただけでルロワのニュアンスがつくことから見ても蔵の影響は大きいのです。ブルゴーニュのワインがあれだけ深みが出るのもテロワールだけの問題ではなく古い蔵に宿る酵母やカビの影響が大きいのでしょう。

逆に南アフリカのアルヘイト・ヴィンヤードのオーナーが語るところによると南アフリカの大学の研究で蔵付きの酵母の影響はほぼないとの研究結果も出ているそうです。多分これは比較的新しい蔵が多く蔵も陸上にあるところが多く、蔵に付いている菌の影響が少ないことが原因でしょう。

最近は白ワインの質が劇的に上がったところが多いのですが、これも醸造中に温度管理ができるようになったことが大きく、コシュ・デュリの自然の環境が理想的だといわれており、それを模して作られたのでしょう。


イタリアなどに行くと地上の蔵も多いので夏場は20度を超すところもあるようです。


しかしそういったことすべて含めてその作り手のワインだということを覚えておいてください。

それこそがそのワインの生い立ちというものなのです。


栽培されるブドウは当然栽培地の気候に左右され、土壌の構成によって様々な特徴が出てきます。長年の経験でこの土壌にはどういったブドウが合っているのかが繰り返し試されて適したブドウが決まってきます。ブルゴーニュでもムルソーなどはほとんどが白なのですが、ごく一部赤ワインが作られています。1m離れただけで土壌の構成が違ってくるといわれているブルゴーニュならではの現象です。

昔から土地のワインに土地の食材が一番合うとされるのは長年の歴史の中で幾度となく試行錯誤が繰り返されできあがってきた結果なのです。ワインだけでなく野菜、肉、チーズなどの加工食品も同じようなことがいえます。


現在世代交代によりワインの世界も大きく変わりつつあります。世代による味覚の違い、今まで先代からの経験則を受け継ぎ作られてきたワインの中に新しい醸造学や栽培法が入ってきてワインもかなり変わりつつあります。しかし先代から続いてきた経験値を捨ててしまうのもどうなのでしょう。かみ砕かれていない知識が経験値に勝るとは言い切れませんし、常に正しいことは変化してくので疑問に思うこともたくさんありますが、特に代を受け継いだ人たちが先代と全く違うようなワインを作っている場合とても成功していると思える人は少なく感じています。

逆に今まであまりぱっとしなかった作り手の場合は劇的に良くなっているところもあります。


ですから世代交代が多く起こっている近年、作り手の善し悪しも実は大きく変わりつつあるのです。実際に私が昔愛していた作り手も残念ながら世代交代で見るも無惨な姿になった作り手もいるのです。


作り手はその環境を肌身で感じワインは作り上げられていきます。どの国でも通用するような作り方では実は美味しいワインはできないのでしょう。そういった環境も含めて継いでいくことこそが世代交代には必要なことだと思います。


もし日本で違った環境で作られたワインを保管することを考えると実はかなり難しいのです。ですからイタリアワインの多くは温度が低すぎると閉じる傾向がありますし、温度の低いところで作られている一部の白ワインは温度が高すぎると緩みすぎる傾向があります。


よって同じセラーでも下の方は温度が低く、上の方は温度が高いので、そこをうまく利用してワインの保管を考えることも必要でしょう。大きな倉庫ではなおさらそういったことが必要だと思います。


ワインを輸入する際に、そういったことを含めて一緒に輸入する生産者を分けているインポーターもいます。


ワインをあまりにも簡単に扱うと、蔵から出てからの育ちが悪いワインになってしまいます。特に現代のワインは酸化に弱く神経質なのです。なかなか難しいとは思いますが、こういったことも考慮入れワインを管理することも大事なのです。


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PUR SANG

美味しいワインがなかなか見つからない、ワインのことが今ひとつよく分からない、美味しいワインを探したり美味しく楽しむためのテクニックを学んでみて下さい。

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