商業主義に翻弄されることのない世界


私がワインを飲んでいて感じるのは商業主義に翻弄されていないほど、魅力度が高いということです。

資本主義の世の中、皆さんいい服が着たい、いい家に住みたい、お金があればあれもやりたいこれもやりたいと思う方も多いでしょう。特に若い時期はそんな世界に憧れたりするはずです。

しかしお金が稼げるようになると、今度はお金を稼ぐために頑張り始めます。そうなってくるとお金に翻弄され実際に今まで好きでやっていたことの本質から離れてしまいがちです。

私はお金を稼ぐのが巧い人が周りに多くいたのでその人たちが何をやっていたのかをよく知っています。女、ギャンブル、酒、当然こんな世界にお金を使うのです。

私はお金持ちが悪いとは思いません。優雅な生活をすることで本当に満足ができるならそれでもいいでしょう。女、ギャンブル、酒で滅茶苦茶できることが好きならそれでもいいでしょう。

私も昔は一時期財布からいつまでたってもお金が消えないような世界を経験しました。当然前者と同じような金の使い方をし、いろいろな経験をしてきました。経験値という意味では良かったのですが、そこに幸福はなかったし満足感を得ることもできませんでした。

地方から出てきた人の多くが、ある程度の年になると田舎に帰るのもとりあえず若し頃の欲求が満たされたからでしょう。

人間が最も満足度の高い状態は、やはりやりたいことができているときです。そのやりたいことのためにお金が必要。でも決してそのお金に翻弄されてはいけません。

例えばラシーヌやフィネス、ラフィネなどが扱っている多くの生産者は、商業主義に翻弄されていないいい意味でまじめな農民です。日々の仕事の中に満足を得ることができる。目的も明確でいい意味で自己満足の世界を生きています。これこそが魅力的な世界を作り出しているわけです。

私も以前フィネスの藤田社長とフランスに行った際、フィネスが扱っていないオファーのあった生産者の元に行きましたが、まさに成金といった感じでワインの魅力も表面的でインスタント食品のように作られた味わいで全く魅力がありませんでした。

確かにワインの世界もむいていない人がワインを作っていたら当然魅力を感じるっことはできません。向き不向きもあるでしょう。しかし商業的に作り上げるようなワインには一時的な魅力しか存在しません。ワインの世界はイギリスが作り上げてきた商業的な世界の中にあり、売るためのワインとでもいえるような世界が蔓延しています。インスタント食品を作る大手の企業と職人との差のようなものです。別に便利なもの、インスタント的なものを否定する気はありませんが、ことワインの世界となると、お酒の世界ではかなり高価な部類に入ってくる世界なので、私はそこに本物の魅力がないと納得できません。


私も初期のロバート・パーカーの本を読んでワインを覚えた口ですから、評論家に否定的なわけではありません。しかし最近の評論家はどっぷりと商業的な世界に浸かっていて面白くない人が多いのです。もっと業界よりではなく個人としての明確な見方を感じることができたら是非見てみたいと思っています。今の時代は間違えたくない、より近道をしたいという気持ちが強い世界。でもそれが逆に遠回りをしていることにもなっている。世の中いろいろな人がいて仕事だから人をだましてもいいとか資格を持っているからより自分たちが得になるような商品を売りつけたいと思っている人が多い。

当然企業活動とはそういったものが多いでしょう。オレオレ詐欺だって仕事だからと思ってやって人も多いそうです。

お金を稼ぐための仕事。そこには多くの欺しあいが存在しています。与えられる側もわからなければそれでいいと思っている人さえいます。

でもワインの世界は基本的に作り手の多くは農民です。昔から社会的に搾取される歴史だった農業の世界。未だにそんな世界が続いています。そんな世界こそ日々の努力、自然との向き合いの中には嘘がないのです。農薬を使ったり化学肥料を使うような農業効率化の時代は減少しつつあります。遺伝子操作した作物も現れていますが、人間が人工的に手を加えたものには必ずどこかに問題が出てきます。だからこそ今自然派と言われるワインの人気が高まっているのかもしれません。


こういった商業主義に翻弄されていないワインこそ、ワインのコンディションが重要になってきます。熱劣化することを前提に作られたようなワインもありますし、酸化防止剤の量が多い方が熱劣化に強いために量を多くしている作り手もいます。しかしそんなことをしていない生産者たちのワインの多くは日本に届いた時点でその多くの魅力を失っているわけです。残念ながら今流行の自然派ワインの多くが酷い状態なのも商業主義に翻弄されているからに他なりません。


私がワインを飲む大きな理由の一つに、私自身を触発してくれるという部分があります。エネルギーを与えてくれるのです。そして安らぎも。私はそんなワインをこれからも探し続けます。


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PUR SANG

美味しいワインがなかなか見つからない、ワインのことが今ひとつよく分からない、美味しいワインを探したり美味しく楽しむためのテクニックを学んでみて下さい。

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