ワインの状態をなかなか認識できない理由


ワインは作り手さえしっかりと選べば、その生産者の蔵でワインを飲むと驚くほど美味しいのです。ところが輸入される過程で本来の美味しさが感じられなくなるような事態になるのです。

その理由はワインの価格を下げることのできる要因が大量購入と輸送コストのカットしかないからなのです。大量に輸入されたワインは通常販売では売り切れないために大幅に価格をダウンし赤字でも売り切る。よく考えれば価格を下げて購入するために大量購入したのに結局意味がないようなことをしているわけです。

輸入コストのカットはワインそのものの状態を悪くしてしまいます。何故か船だけ定温で輸入したと輸入者ラベルに記載し、それ以外のトラックなどは常温でという分からなければ良いと思っ

ているわけです。赤道直下を通る船便で定温で運ぶことはより悪化することは防いでくれますが、ワイン自体はもうそれまでにある程度劣化しています。一度劣化したワインは絶対に元に戻ることはありません。劣化で一番先に感じられることは酸の劣化です。酸が劣化することで美味しさの半分以上がなくなってしまっているのです。

世界的に健康志向になっている現代、フレンチなどを見れば歴然なのですが、30年前と現在とでは料理が驚くほど変化しています。それと同じことがワインの世界でも起こっています。30年前の味わいで育ってきた私たちが現代のワインの味覚に順応することは非常に難しく未だに昔を懐かしむ人も多くいます。逆に日々ワインを飲んでいる方は、私の想像以上に現代のワインになじんでいることに驚かされることもあります。

現代のワインは自然派と言われるように、農薬など人工的な物を極力使わずに、酸化防止剤も使わないようなワインが増えています。簡単に言えば味わい自体昔のワインとは全然違いますし、ワインも早熟で熱劣化にはワイン自体が弱いのです。味わいのインパクトや主張が昔のワインと比べもっと繊細なところにあるので、ワインが壊れてしまうとその魅力の大半がなくなってしまいます。

では昔のワインは熱劣化に強かったかと言えば実はそんなことはありません。昔は吃驚するほど酷いワインもあった。ただ熱劣化によって無理矢理熟成が進んだようになったり、独特の腐敗臭が魅力的に感じたりすることがあったわけです。それも現代のワインのように早熟なワインは少なく何年も寝かせないと飲めるようにならなかったのです。

輸入だけでも問題は山積ですが、実はワインの販売自体にも大きな問題があるのです。

私の経験上、ワインの保管に関しては年間の温度差はある程度あった方が良いのですが、一日に2度以上の大きな温度変化にさらされると明らかにワインは劣化していくのです。私が飲食店をしている頃にある酒屋さんから仕入れていたのですが、そこには箱そのままで保管する倉庫と店舗に分かれていました。通常は輸入されたばかりのワインを購入していたので良い状態のワインが多かったのですが、あるとき直接そこの酒屋さんに行って店舗にそのまま置いてあるワインを購入したらワインが本当に酷い状態だったことがあったのです。これだけ良い状態のワインを輸入しているのにこの差ってどういうことなのだろう。ある意味これがワインの保管に対する疑問のスタートだったのかもしれません。

その当時はいろいろなインポーターや酒屋さんを使ってみましたが、当然良くないワインもあるわけです。その過程でインポーターの違いや酒屋さんの違いを意識していったのです。

デパートや酒屋さんの多くは店舗にワインをそのまま置いてあります。最近はパリなのでもそんなお店が増えています。

今では大手のワインショップですが、昔そのショップに行ったとき、店内はある程度涼しい環境だったのですが、店内に入りきらないワインを外に放置してあったことを未だに憶えています。他のワインショップでは店内に高級ワインだけを入れてある部屋のようなワインセラーがあったのですが、天井を見上げたら屋根がなく店内と同じ環境。壁しかない驚きのワインセラーでした。

レジはボイラーのすぐ前にあり凄く暖かい。

最近ではそんなことはなくなったと思いますが、とにかく店内をいくら冷やしても人の出入り、エアコン自体の温度差によって店内は大きな温度変化にさらされます。それが凄く問題なのです。

大きな部屋のようなセラーにも問題があり、温度変化が多いのです。セラーの中に入れてもケースなどにワインを入れなければワインは確実に劣化していくのです。

大手のインポーターや酒屋さんはバラだしでワインを詰めやすいようにセラー内にワインをそのまま並べているところも多く、ケースに入れているワインよりも明らかに劣化している可能性が高い。最近は酒屋さんにしてもインポーター、飲食店でも極力在庫を持たないような方向性になっているので、飲食店でもケース単位では購入しないでバラで購入することが多い。それの方が外れがでても次から買わなければ良いので現実的。でもバラだしにはこんな危険もあるのです。

飲食店でもセラーが古くて振動がでてしまっていたり、温度変化が大きいセラーもありますし、場所がなくて振動が大きい冷蔵庫にワインを保管していることもあります。店によっては未だに店内にそのまま起きっぱなしだったりすることもあります。

これだけ問題のあるワインの世界ですが、それでも昔と比べると良くなっているのは事実。意識の高い人が多くなっているのです。

さてここからが本題。

最終的にお金を払ってワインを楽しむ人たちが何故ワインの状態を認識できないのでしょうか。

それは状態の良いワインだけを提供しているお店が非常に少ないからです。つまり有名なワインには出会えても状態の良いワインに出会える機会が皆無に近いのです。でもワインには興味がある。ワインを単純に美味しいと思えない、でもたまに美味しワインがあり魅了される。なんて不条理で訳の分からない世界。だから勉強好きの日本人はワインスクールに行くのです。でも多くのワインスクールはテイスティングで使用するワインは劣化していますし、ワインの知識は教えてくれても状態の良いワインをどのように手に入れられるかは教えてくれません。だから頭でっかちの人が増えたり、資格を取ることだけが目標になったり、出会いの場という意味合いが大きくなったりするのです。しかしそういった現実があっても、実際ワインを楽しもうと思っても周りにワイン好きがほとんどいないという現実もあり、やはりワインスクールは価値があると感じてしまうのです。基本的にワインに興味のある人しかいないという特殊な環境だから。

ではここで一番問題なのは何かと言えば教える側にあるわけです。ワインを飲ませる側のお店にいるソムリエなど、そして学校でワインを教える教師、これらの人の意識が変わらなければ何も変わらないのです。私が知っている限り、昔よりもは良くなっていますがまだまだです。全体からすれば1%もいないのが現実でしょう。

ではどうすれば良いのか。

状態の良いワインを手に入れてそういった環境の中に身を置くことです。ワインは食事と同じで、美味しい美味しくない、好き嫌いだけでワインを感じていくのが最も早道でわかりやすいのです。

私は最近梅丘にある魚屋さんでしか魚を買いません。正直スーパーより高い。でも魚の大きさや良を考えると実はそこまで高くないのですが、とにかく美味しさのレベルが違う。もうスーパーの魚なんて買えません。野菜や肉もそういったお店を探さなくては、、。

一度状態の良いワインを味わい、状態の良さを更に引き立たせるテクニックを知ってしまえば、状態の良いワインの世界から離れることができなくなります。そしてそこには幸せが待っているのです。昔は麻薬的なワインの世界でしたが、最近のワインは麻薬的ではなく幸せ感が高くなる感じです。お酒はストレスを紛らわせるためにアルコール度の高い物を飲むとアル中になりますが、ワインは健康的でアル中にはつながりにくい。美味しい料理を楽しむようにワインを楽しむ。なんとも幸せな世界なのです。

PUR SANG

美味しいワインがなかなか見つからない、ワインのことが今ひとつよく分からない、美味しいワインを探したり美味しく楽しむためのテクニックを学んでみて下さい。

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