インポーター業界を斬る

私は今までインポーターに対する正しい見方をする記事を見たことがありません。ワイン雑誌はワイン業界と利害関係がありますし、ワイン業界は結構狭いので業界関係者もあまりインポーター業界の内情を明かすことをしません。しかし実際ワインを購入する飲食店や個人のお客様が惑わされる要因を作っているのもインポーターなのです。是非インポーターの内情を知った上でもう一度自分のワインに対する見方を考えていただきたいと思います。


ワインにはインポーターの設定した上代があります。同じワインでもインポーターによって上代設定は違います。ではどこで違ってくるのか。

一つのドメーヌと長年付き合っているインポーターはかなり安い価格でワインを購入している場合があり、関係が短いほど購入価格が高くなるという傾向があります。購入するロットの問題もありますからロットが多いほど購入価格は安くなることが多い。実際に直接取引をしているインポーターのワインにはこのような傾向があります。

ワインの作り手はクルティエという仲介業者を使いワインのプロモーションと販売の委託をしていることがあります。このクルティエを通すとそこに仲介手数料が加わり直接生産者と取引するよりも買値は高くなります。

直接生産者から買わない場合は世界中にあるワイン商から買い付けます。ワイン商は一度ワインを買い付け自社倉庫に入れそれを少ないロットで販売するために小規模業者やあまり多くのロットを買い付けられないところ、スポットでワインを購入する場合はワイン商を使っている場合が多いのです。ヨーロッパのワイン商にはかなり状態に差があり、全体的に問題のあるワイン商が多いのが現実。

それ以外にもレストランから直接買い付けたり、個人のワインコレクターから買い付ける場合もあります。

コンディション的な安心感という意味ではドメーヌ蔵出しが最良なのですが、今では手に入らないワインなどはワイン商から買い付けたりその他の手段を使ってワインを買い付けているのです。特にボルドーのワインはプリムール以外で直接シャトーから買い付けることが非常に難しいのでワイン商を使っているインポーターが多いのです。

ですから上代設定はこういった事情やワインを輸入する際に生じる経費を載せた上で各社ごとに決まるのです。

インポーターには同じワインを輸入している他社がいた場合はある程度上代設定を近い価格帯にすることもあるのですが、自信のあるインポーターはそうはしません。


上代設定には結構まやかしがあり、大手のインポーターなどは高めに設定し割引率を購入する相手を見て変えたり、売れない場合極端に割引したりします。一部のインポーターは上代の4掛けで売ったりしている場合があるのです。大手の場合資金力があるので小さなインポーターでは輸入できない量が多い作り手を扱うことが出来ます。ところが作り手によっては年間の輸入量がさばけない。このような場合は決算前に、はかすために廉価で投げたりするのです。現在多くの酒屋さんがあまりコンディションを気にしないのもこういった業者とのつきあいの方が利益が上がるためです。非常に競争が激しい酒販店業界ですからまともに商売をしていたら利益率の薄さのためにどんどん消耗してしまいます。極端に安い価格の出るようなワインはこういったワインか、世界中にいる最も安い出し値のワインを買うからに他なりません。そしてだぶついているワインを大きなワインショップは現金で安く買ったり、これだけの量を買うからといって極端に安い価格で買い付けているのです。そういった意味では家電量販店と同じようなな感じです。


飲食店も非常に競争が激しいためにどれだけ安く流してくれるかそればかりを追い求めている所もあります。コンディションを無視すれば最も安くワインを購入することは簡単なのです。ワインは価格で比べるほどに幸せが逃げていくのです。


さて私たちがお付き合いしているインポーターは滅多なことでは安くしてくれません。これはもともと上代設定が安いからです。小さなインポーターは殿様商売は出来ないために基本上代設定は低いと思って良いでしょう。ですからワインは単に価格だけで見てしまうと間違いを起こしやすいのです。中身の状態など見た目だけで判断するのは難しいですし、安く売ろうと思ったらそれなりのことをやっているわけですから良心的とはいえないのです。ワインの世界では良心的と思ってしまうような価格であることは、要するに経費を減らしその分コンディションが悪くなっていると見るのが正しい見方なのです。


インポーターは輸入経費を当然ワインに上乗せしているわけですが、今完全な状態でワインを輸入するためには1本あたり400円くらいの経費がかかる場合があります。400円というのは下手をしたら購入したワインの仕入れ額よりも高い場合すらあります。ですから通常のインポーターは400円の経費なんかかけないわけです。どこをどうやって減らすのかそれをやっているからワインのコンディションは良くならないわけです。そしてそれがワインビジネスとされています。私に言わせればどうしようもないインポーターは「別に売れているから良いじゃない」とか「どうせ分かりっこないよ」と思っているのです。そしてそんなワインばかり飲んでいるために本当に分からなくなってくるのです。ワインの理解度は環境に大きく影響されるために、コンディションの良くないワインを輸入するインポーターのスタッフはまともなワインを飲む機会を逸します。私が知っている限りインポーターのスタッフでいろいろなインポーターのワインを飲み比べる人は極端に少ないのです。自分たちの扱っているワインを客観的に見る視点に欠けているのが現実です。


そして仕事だからという感覚で仕事だと人を騙しても良いと思っている。売れさえすれば良いのですから売るためにはどんなことでもするのです。のりの良い営業ほど気をつけた方がいいですね。


多くのワインファンは作り手でだけで判断しがちですが、実はそういった買い方をすると間違えを起こすことが多いのです。つまり有名銘柄ほど簡単に売れるためにインポーターもそういったワインを買い付けることが多い。状態など無視しているところが多いのです。良いワインほど寝かせなくてはいけないわけですから、何年後かにワインを開けたときにはがっかり、、そんな経験はないでしょうか?


インポーターを見るときにどんな特徴があるのかも一つの指標になります。たとえばラシーヌなどはコンディションが良くないと全然美味しくないようなワインが多い。こういったワインが多いと言うことはかなりリスキーなことなのです。だからこそラシーヌのコンディションは他を圧倒しているのです。インポーターの特徴に関してはこれからどんどん紹介していきますのでそちらをご覧下さい。


私がインポーターを厳選しているのも上記のような理由があります。ワインを価格だけで判断してしまうと間違いなく酷いものをつかまされるために、インポーターとしての信頼度の高さがポイントになってきます。ワインを判断する際、コンディションの良いワインばかり飲んでいればより深く判断できるようになってきます。実はワインはコンディションの先に真の深さがあるのです。


特に自然派のワイン、現代的なワインは変質しやすく、作り手は今実際のワインの流通を全く無視したような変質しやすいワインを作っています。そしてのりだけでそういったワインをいい加減な輸入方法で変質させ流通させています。逆にそういった方向性とは真逆の脚色系生産者もおりそういったワインは熱が入った方がわかりやすくなる傾向があります。大きな要素だけが主張されるようにワインを作り上げます。ワインにオークチップを沢山入れたりして味わいを作り上げたり、特にこういったワインはアメリカ向けが多くそういったワインが日本に入ってくるとぎょっとすることがあります。


ワインは確かに個人的な好みや趣向がありますからこれが正しいということはないのですが、ただ変質したワインが正しい世界とだけはいえません。どうすれば変質させ美味しく出来るなんて法則はないのですからワインが美味しくなる確率は非常に低い。

ありのままの姿のワインを基準としてとらえるのが正しいのです。


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PUR SANG

美味しいワインがなかなか見つからない、ワインのことが今ひとつよく分からない、美味しいワインを探したり美味しく楽しむためのテクニックを学んでみて下さい。

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