自然派ワインの検証
先日とあるレストランでアリス・エ・オリヴィエのシトリー2013年を飲んだのだが、温度が高くレストランで食事と合わせるにはきっと皆美味しいというのだろうが、すごく丸くなっていてある意味この作り手の特徴の多くは隠れ何を飲んでいるのかわからないようなもったいなさがあった。周りにコルクを置いたりちょっと冷やしたりしているうちに本来のすばらしさが出てきて酸もきちっと感じられるようになりさすがの凄さを体感できた。やはりアリス・エ・オリヴィエは自然派ワインの中でも突出した存在であり熟成することによりとてつもない姿を現すという意味でも完成形ともいえる存在になってきた。
ただ一つ問題なのは本当の意味での素晴らしさを皆さんが体感できているかなのである。本来はお店などでソムリエがやるべきことだが、意外とお気楽な感じのお店が多くとてもではないがそれを表現させることの出来るソムリエは多くないのが現実。
アリス・エ・オリヴィエは酸化臭のするような多くの自然派とは比べものにならない。日本では今自然派ワインブームで驚くほど鼻につくような酸化臭のするワインが持て囃され、フランスと日本以外では全くといって良いほどビジネス的に成り立っていない自然派ワインが、なぜ日本で成功したのか不思議に思っている海外のワイン関係者も多い。そして実は失敗したワインでも日本では買ってくれるという現実もあり、とにかく日本が失敗した自然派ワインのゴミ箱にならないように気をつけるべきである。
酸化と熟成。昔はわりとはっきりしていたのだが、最近の自然派ワインの場合それがあまり明確ではなくはっきりとした定義が見いだせないような状況である。酸化防止剤を少なくしたり入れないことや醸造過程であえて酸化の方向に持って行くやり方は、ある意味熟成の過程を早くして深みを出すための作業とも見ることは出来る。しかしそれがちゃんとした形となって深みを出せる作り手はごくわずかしかいない。
昔日本でも瓶詰めされたワインをわざと熱劣化して飲めるようにするようなことが行われていたが、酸化香が好きな日本人は同じようにとらえているのだろうか。酸化とはいっても昔の姿とは似ても似つかぬ具合だが、それでもそれに反応する人が多いようである。一つ間違えると、売れるからという理由だけで酸化臭を出してくるワインが登場しているかもしれない。
ラ・フェルム・ド・ラ・サンソニエールやニコラ・ルナールなどのワインを飲むとまさにレベルの違う境地を見ることが出来る。とても比べものにならない世界なのだ。この綺麗で深い世界こそ自然派ワインの求めるべき世界であるのに、ちまたには不思議なことにめちゃくちゃ酷い自然派ワインがあふれている現実がある。
作り手の力量も問題だが、とにかく扱いの悪さももうあまりにも酷くてあきれるばかりである。酸化防止剤がほとんど入っていないワインは通常よりも低温で扱わなければならないのに、ほかのワインと同様店内に置きっ放し。これでは悪くなるだけではなく美味しさのほとんどが飛んでしまっている。
たぶん今フランスを中心に自然派の醸造方法で一流の作り手を目指すことがある意味流行なのだろう。だからこそ酷いワインも多いのである。残念ながら才能がある作り手は一握りなのである。
最後に自然派ワインといえどもすべてが早熟ですぐ飲むワインばかりではない。やはりその本質が出てくるまでには数年は寝かせる必要があることを忘れてはいけない。
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