ワインの劣化の仕方
一瞬美味しく感じてしまうワイン、私にもそんな経験は沢山あります。でも一瞬の美味しさを感じた後、底の浅さを感じてしまうことが多い。これはコンディションが落ちてしまっているワインのお話です。
熱が入ること、温度変化にさらされ劣化したワインは、劣化の仕方にもよりますが、一部の大きな要素が花開いたように感じ、一瞬美味しく感じることがあるのです。 でも劣化することで失うものは多く、その後感じられるはずの要素が駄目になっているために底の浅さが露呈するのです。
特にリーズナブル系のワインは、早熟なワインが多く開くのも早いのですが、リーズナブル系のワインをなめてはいけません。この価格だからこんなものだろうと諦めてしまうことがあるのではないでしょうか。でも違うんですよね。リーズナブル系のワインでもコンディションが良ければ高価なワインよりも魅力的に感じることさえあるのです。
皆さんがワインを飲む際に、1本一日ですべて飲みきらねばならないとプレッシャーを感じることがあると思います。普通の方は2〜3日かけて飲むことも多いはずです。私も飲みきれない場合2日目に飲んだり忘れていて3〜4日たってから飲むこともあります。飲み残したワインはどれほど瓶にワインが残っているかで空気の量による酸化の仕方が変わってきますが、 コンディションの良いワインは落ち方が全然違うのです。
ゆっくりと1本のワインを飲む場合も、ワインの落ち方が全然違います。
ここにワインを飲んでいるときの満足度の違いが出てくるのです。
もし疑問に思う方はワインホリックのあるリーズナブル系のワインと同じものを他のワインショップで買って飲み比べてみてください。実際このようなことをしたお客様から違いが明確にわかったとご連絡をいただくことも多いのです。
私もいろいろなお店に行ったり、自分たちのワインを飲むことも多いのですが、どのようになったらワインが劣化してしまうのかをいつも確認しています。同じインポーターなのに何故ここまで味わいが違うのか、その理由は何か、それを常に確認しようとしまう。
インポーターが良くないから、酒屋さんが違うから、セラーが良くないから、冷蔵庫に入れてあるからなどいろいろな理由があります。
高額なワインの場合、劣化していると抜栓直後うんともすんとも言わず、固く閉じていたり、変質した香りがしたりすることも多く、デキャンタージュをすること自体コンディションが悪い場合が多い。待たなければ美味しくならないようなワインは開けてはいけないのです。
ワインの場合当然若すぎるが故に飲めない場合もあります。しかしごく一部のワインを除き、若くても酒質の良さは当然感じることができます。ぎゅっと凝縮して塊のようになっている要素、これはある意味コンディションの良いワインの特徴なのです。
違和感を感じるような香りや味わい、このような場合はコンディションを疑うべきなのです。
特にドメーヌ・ロマネ・コンティー社のワインなどは、開けたとき閉じていて美味しさを全く感じない場合はまず劣化しています。私はドメーヌ・ロマネ・コンティー社のワインはブルゴーニュの頂点にあるワインでそれを飲めば頂点のなんたるかを知ることのできるワインだと思っていますが、あまりにも人気があるためにほとんど素晴らしいコンディションのワインに出会ったことがありません。
30年以上ワインを飲んできてコンディションの良かったワインは50本にも満たないでしょう。特に自分で仕入れたワイン以外はほとんど劣化して見るも無惨なワインだったのです。
これはアンリ・ジャイエやヴォギエも全く同じ。
有名なワインほど出所を疑ってみなくてはいけません。
ワインは当たり外れが多い。その要素がもともとの生産者やコルクにあるのならばまたあきらめも付くでしょうが、ワインを扱う側の問題である場合、責任の所在が明らかではなく結局は最終的に飲む側がすべてをかぶることになります。
まずはちゃんとしたコンディションのワインであることが当たり外れを少なくするのです。
ワインホリックの場合、まずはインポーターの信頼度を測ります。日本への出入り口が良くなければそこでアウトなのです。ワインの場合、インポーターだけではなくその後の管理、酒屋さんや、飲食店、そして皆さんの管理とその後の管理でもワインは大きく変質します。
だからこそまずはインポーターが大事なのです。
インポーターを限定すると、扱う生産者も当然限定されてしまいます。ですから一部のワインは信頼できるインポーターに掛け合い並行で輸入をしてもらいます。
しかし限定された生産者の中でワインを扱っているとわかってくることが沢山あります。
まず世の中で知名度が低くても評価の対象になっていなくても美味しいワインは沢山ある。
逆に評価の対象になることを拒否している生産者もいる。
ブルゴーニュのように細かくいくつもの畑を持っている生産者の場合、買う側はどの畑が素晴らしいのかと調べいいとこ取りをする傾向がありますが、実はコンディションが良ければ、畑の善し悪しは価格に反映されている場合が多く、生産者も畑の格をわかった上でワイン造りをするので、それなりにすべて美味しい。ヴィンテージに関しても昔のように大きな失敗もなく、それぞれのヴィンテージの特徴を把握した上でのワイン造りが行われている。
こういったことがわかってくると、生産者だけでワインを買うことの危険性がよく見えてきます。そして評論家の試飲状況も決して理想的ではなく、またそれが良いワインであったとしてもどこのインポーターが扱うのか、どこの酒屋さんが扱うのかで、全く違うワインとなってしまうことがわかってきます。
まだまだ私でもわからないことが沢山ありますが、それを一つ一つ解決しどのワインを飲んでも高い納得度を得られるような世界を作っていきたいと思っています。
決して自然派だけに走ったりせずに、飲んで納得度の高いワインをコンディションという基本、つまり生産者のワインの本質を伝えられるワインとしてお届けすることが一番大切なのです。
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