業務用冷蔵庫にワインを保存してはならない

飲食店に行くと時々業務用冷蔵庫からワインを出しているところがあります。確かにスペースがなく手狭な飲食店にとって白ワインや泡系を保存したり提供するときに適温にするために冷蔵庫を使わざるえないことは容易に想像できます。最新のセラーでないと一つのセラーでは白か赤どちらかに設定温度を決めなければならないために、2つのセラーが必要です。

さて業務用冷蔵庫の問題点は、開け閉めが多いために温度の回復力を強めるために振動が多いという特徴があります。これは動力が一体化されているために振動が伝わるためですが、振動だけではなく温度が低すぎることも問題です。

ちゃんとしたインポーターのワインなのに、何故か酸が落ちてしまっていて輪郭がぼやけていると思うワインの多くは、冷蔵庫が原因になってしまっていることが多いのです。酒屋さんでの保管が悪い場合もありますが、この場合はセラーから出している場合にそう思うことが多くあります。

振動はワインが落ち着くことが出来ずに酸が落ちてきてしまいます。わかりやすく飲みやすくはなっていますが、酸が落ちることで輪郭がぼやけ多くの魅力的な要素が失われています。特に夏場などは爽やかな酸が体を潤してくれますが、ぼけっとしたような輪郭がはっきりしないワインは冷やしたところで抜けたビールのような感覚しか与えてくれません。

よく酸が苦手だという人がいますが、これはよっぽど酸が強すぎる場合か、酸が変質し豊かな果実味とのバランスが悪くなっている場合です。

果実の質感は酸が支えているのです。

とはいえ、昔と比べるとワインの状態にこだわる方は増えましたし、酷いワインを提供するお店も減ってきてはいます。(たまたま私が行っているお店のことですが)

どんなに素晴らしいインポーターのワインでも、本来の姿を再現できない限り作り手の本質に理解することは出来ませんし、それ以上にお客様に感動を与えることは出来ません。

ただソムリエの資格を持っていると言うことに甘えることなくプロとしての自覚を持って作り手本来の姿をお客様に提供することが大事なのです。


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PUR SANG

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