ワインにとって酸が一番重要なのです

私たちがワインを楽しみ始めた30年ほど前は長熟なワインが多く、わざとワインを

酸化させて旨味を引き出すような手法が一般的でした。

その当時はワインの輸送も今のように確立されていないために現在のような

作り手の蔵と同じような状態のワインを手に入れることは非常に難しかったのです。

それでも現在のような温暖化の影響は少なかったために慎重に輸入すれば同じような

輸入の仕方でも現在よりも状態の良いワインは多かったのです。

酸のことに関してはレモンが一番わかりやすいのですが、もしレモンを冷蔵庫ではなく

常温で1週間放置するとフレッシュな酸が失われることは誰でもご存じでしょう。

料理にレモンやかぼすをかけるとフレッシュな酸が料理の輪郭を明確にしてくれます。

ビネガーに関してもレストランなどでは常温で放置し酸を壊し柔らかくして

扱っているところもありますが、これでは本来のビネガーの良さを引き出していません。

酸は甘みと合わせバランスをとることで非常に意味をもってくるのです。

酸が苦手な方もいらっしゃいますが、それはある意味バランスが悪いときの

酸が苦手だと思った方が良さそうです。

火を通して使う酸の場合はまた意味合いが違ってきますが、火を通さない場合は

全体的な酸と甘みのバランスを考えれば非常に美味しく出来ます。

ワインの場合も同じで、ワインの酸が壊れてしまうと一気にワインの輪郭が

ぼやけてきます。ワインの酸によって魅力的に感じられた果実味も酸が壊れると

同時に疑似熟成し急激に壊れます。

通常あり得ないほど熟成の進んだようなワインは酸と同時に果実味も壊れている

と思って良いのです。そういった状態を魅力的に思ってしまう場合もあります。

特にフルボディーのワインにそういった傾向があります。

私たちも以前はそのようなワインに大いに興味がありましたが、現在のように

繊細に作られたワインは以前のような魅力は出てきません。

現状のようにコンディションの良いワインが手に入るようになると、本来のワインの

魅力を確認出来るようになります。そうなってくるといかに状態の悪いワインが

ぼやけているのか、多くの魅力を失ってしまっているのかがよくわかります。

現状の状態の良いワインも実は扱い方が難しくなかなか本来の姿を見ることは

新調に扱わなければ難しいのですが、それでもかなり高い確率で美味しく飲む

ことは出来ます。

ワインホリックのワインを飲んでまず何が違うのか、それは他のワインにはない

フレッシュ感があるのです。このフレッシュ感こそが酸が壊れていない証拠なのです。

レストランに行くと私たちの感覚よりも高い温度でワインを提供している場合があります。

コンディションの良いワインを高い温度で提供してしまうと輪郭がぼやけてしまいます。

状態の悪いワインは温度が低いと要素がでにくいために温度が高めの方が良いのです。

これはレモンと同じで料理にかけるなら常温のレモンより温度の低いレモンの方が

酸が明確で美味しく感じるのと同じことです。

状態の良いワインはちょっと低めの温度の方が酸が生き生きと感じられ輪郭が

明確になるのです。

低すぎると要素が全てわからなくなるので白や泡は8度〜9度、赤は14度から15度を

基本で考えてください。ワインによって温度を若干変えることも必要です。

酸は一度壊れると二度と元には戻りません。

酸が壊れる要因は高い温度と温度変化です。1日2度以上の温度変化に1週間

放置されるとワインの酸は徐々に壊れてきます。

皆さんよく勘違いされていますが、ワインがなかなか開いてくれない、要素が

なかなか現れないと思っている多くのワインはすでに酸が壊れているのです。

状態の良いワインは古いスタイルのワインでない限り、とりあえず若くても

フレッシュ感があり果実味も健全。果実が若いなと感じるのは当然ですが、

なかなか開かない不健全なワインとは全く姿が違うのです。

料理の変化と主に今ワインも大きく姿を変えてきています。自然派系のワインも

今では多くの生産者が取り入れ、一般的になりつつあります。

そういった現状においては酸化防止剤の量も減り、ワインもより繊細になっています。

こういった現状で以前と同じようなワインの輸入の仕方、同じような管理方法では

方との美味しさを引き出すことは出来ないのです。

かなかな変わらないワイン業界、テイスティングの仕方も実におおざっぱですし

試飲会に行っても呆れることが多いのですが、プロがこのような状態ではいつまで経っても

美味しいワインにたどり着くことは出来ません。

プロはワインは安くないと売れない、有名でないと売れない、どうせ味なんか

客はわかっていない、実はこんなことを思っている人が多いのです。

呆れるばかりですが、昔からこれがワインビジネスだと真顔で語っているプロが

多かったのです。

今こういった常識が徐々に変わりつつあります。ラシーヌ、ラフィネ、フィネスを

中心にワインビジネスという虚構に左右されることなく我が道を行くインポーターが

ここ10年静かにワイン業界を変えてきたのです。

そして若手の飲食店を中心に徐々に状態の良いワインが浸透し始めていますし、

最終的な飲み手であるワインファンも次第に変わり始めています。

ワイン業界はなかなか変わらないのでワインを楽しんでいる皆さんの力が

最終的にはワインの世界を変えていくことを是非知ってください。


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PUR SANG

美味しいワインがなかなか見つからない、ワインのことが今ひとつよく分からない、美味しいワインを探したり美味しく楽しむためのテクニックを学んでみて下さい。

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